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『公事方御定書』下巻『御定書百箇条』

『公事方御定書(1742年)』
 享保の改革の一環として、徳川吉宗が命じて老中松平乗邑が担当し、大岡越前守忠相が中心となって編纂した刑事判例集を中心とする基本法典である。
 正式名称は『公事方御定書』(上下二巻)だが、下巻は『御定書百箇条』と通称され103の条文からなる武士以外を対象とした法律である。
 
 江戸時代の法体系は、初期は三河時代の法体系の影響が色濃く、戦国時代の分国法の特色を反映し、それが刑罰の残酷さに現れていた。
 過去の判例を取りまとめた『御定書百箇条』は、過去の法体系の影響を残す一方で、死罪中心主義から遠島、追放、入墨といった刑罰を取り入れ、慣習刑法から成文刑法と転換したものとして評価されている。
 諸藩の中には、これをそのまま藩内の法律として適用するところも多かったといわれている。
 
「公事方御定書」
下巻『御定書百箇条』(通称)の一覧
今回は、詳細は省略

目安裏書初判之事
裁許絵図裏書加印之事
御料一地頭地頭違出入并跡式出入取捌之事
無取上願再訴并筋違願之事
評定所前箱え度々訴状入候もの之事
諸役人非分私曲有之旨訴并裁許仕直等之事
公事吟味銘々宅に而仕候事
重キ御役人評定所一座領知出入取計之事
重キ御役人之家来御仕置に成候節其主人差扣伺之事
用水悪水并新田新堤川除等出入之事
論所見分并地改遣候事
論所見分伺書絵図等に書載候品之事
裁許可取用証拠書物之事
寺社方訴訟人取捌之事
出入扱願不取上品并扱日限之事
誤証文押而取間敷事
盗賊火付詮議致方之事
旧悪御仕置之事
裁許裏書判不請もの御仕置之事
関所を除山越いたし候者并関所を忍通候御仕置之事
隠鉄砲有之村方咎之事
御留場に而鳥殺生いたし候もの御仕置之事
村方戸〆無之事
村方出入に付江戸宿雑用并村方割合之事
人別帳にも不加他之もの差置候御仕置之事
賄賂差出候もの御仕置之事
御仕置に成候者欠所之事
地頭え対し強訴其上致徒党逃散之百姓御仕置之事
身体限申付方之事
田畑永代売買并隠地いたし候もの御仕置之事
質地小作取捌之事
質地滞米金日限定
借金銀取捌之事
借金銀取捌定日之事
借金銀分散申付方之事
家質并船床髪結床書入証文取捌之事
二重質二重書入二重売御仕置之事
廻船荷物出売出買并船荷物押領いたし候者御仕置之事
倍金并白紙手形にて金銀貸借いたし候もの御仕置之事
偽之証文を以金銀貸借いたし候もの御仕置之事
譲屋敷取捌之事
奉公人請人御仕置之事
欠落奉公人御仕置之事
欠落者之儀に付御仕置之事
捨子之儀に付御仕置之事
養娘遊女奉公に出し候もの之事
隠売女御仕置之事
密通御仕置之事
縁談極候娘と不義致し候もの之事
男女申合相果候者之事
女犯之僧御仕置之事
鳥派不受不施御仕置之事
新規之神事仏事、并奇怪異説御仕置之事
変死のものを内証にて葬候寺院御仕置之事
三笠附博奕打取退無尽御仕置之事
盗人御仕置之事
盗物質に取又は買取候者御仕置之事
悪党者訴人之事
倒死并捨物手負病人等有之を不訴出もの御仕置之事
拾ひ物取計之事
人勾引御仕置之事
謀書謀判いたし候もの御仕置之事
火札張札捨文いたし候もの御仕置之事
巧事かたり事重キねたり事いたし候もの御仕置之事
申掛いたし候者御仕置之事
毒薬并似せ薬種売御仕置之事
似せ金銀拵候もの御仕置之事
似せ秤似せ枡似せ朱墨拵候もの御仕置之事
出火に付而之咎事
火付御仕置之事

人殺并疵付御仕置之事
○主殺  二日さらし、一日引廻、鋸挽の上、磔  
○古主を殺し候もの 晒の上、磔
○親殺       引廻の上、磔
○人を殺し候もの  下手人
○人殺しに手伝いたし候もの 遠島
○人殺しに手伝は致さず候得共、荷担いたし候もの 中追放
○主人に手負はせ候者、さらしの上、磔、引廻しに及ばず、没収前に同じ。…
○車を引く者で、人を引き殺し候時、殺し候方側を引き候もの 死罪
※これは交通事故での自動車運転過失致死は死刑ということである。

相手理不尽之仕形にて下手人に不成御仕置之事
疵被付候者外之病にて相果疵付候もの之事
怪我にて相果て候もの相手御仕置之事
婚礼之節石を打候者御仕置之事
あばれもの御仕置之事
酒狂人御仕置之事
乱気にて人殺之事
十五歳以下之者御仕置之事
科人為立退并住所を隠候者之事
人相書を以御尋に可成もの之事
科人欠落尋之事

●拷問可申付品之事
○人殺
○火付
○盗賊
○関所破
○謀書謀判
 右の分、悪事いたし候証拠確かに候えども、白状致さざるもの並びに同類の内白状致し候えども当○詮議の決めざる内で、外の悪事が分明に相知れ其の科にて死罪に行われるべき者の事
右の外にも拷問申し付けべくしかる品もこれ有り候はば、評議の上申し付けべく事
 但し拷問口問いの節、立ち会いのものを差し越し、吟味の様子申し口を得(とく)と承り届け候よう申し付けべく事

遠島者再犯御仕置之事
牢抜手鎖外し御構之地え立帰候もの御仕置之事
辻番人御仕置之事
重科人死骸塩詰之事
溜預ヶ之事
無宿片付之事
不縁之妻を理不尽に奪取候もの御仕置之事
書状切解金子遣ひ捨候飛脚御仕置之事
質物出入取捌之事
煩候旅人を宿送りに致候咎之事
帯刀致候百姓町人御仕置之事
新田地え無断家作いたし候もの咎之事
御仕置に成候者欠所田畑を押隠候もの咎之事
御仕置に成候もの倅親類へ預ヶ置候内出家願いたし候もの之事
年貢諸役村入用帳面印形不取置村役人咎之事
軽き悪事有之もの出牢之上咎に不及事
名目重相聞候共事実において強而人之害に不成は罪科軽重格別之事
吟味事之内外之悪事、相聞候共旧悪御定之外は不及相糺事
僉議事有之時同類又は加判人之内より早速及白状もの之事

●御仕置形之事
○鋸挽(のこぎりびき)
 一日引き廻し、両の肩に刀目を入れ、竹鋸に血を付け、側に立て置き、二日晒す、挽き申すべしと申すものこれ有る時は挽かせ候事
○磔
 浅草品川において磔に申し付け、在方は悪事いたし候所へ差し遣わし候儀もこれ有り、尤も科書の捨て札これを建て、三日の内は非人を番に付け置く
 但し引き廻し、または科により引き廻しに及ばず、欠所は右同断
○獄門
 浅草品川において獄門にかける、在方は悪事いたし候所へ差し遣わし候儀もこれ有り、引き廻し捨て札番人は右同断
 但し牢内に於いて首を刎り(切り)欠所は右同断
○火罪
 引き廻しの上、浅草品川において火罪申し付け、在方は火を付け候所へ差し遣わし候儀もこれ有り、捨て札番人は右同断
 但し物取りにてこれなき分は捨て札に及ばず、欠所は右同断
○斬罪
 浅草品川両所の内の町奉行所の同心がこれを斬る、検視は御徒目付、町与力
 但し欠所は右同断
○死罪
 首を刎り、死骸は取り捨て、様者(ためしもの)に申し付け
 但し欠所は右同断
○下手人
 首を刎り、死骸は取り捨て
 但し様者には申し付けず
○晒し 日本橋において三日晒す
 但し新吉原のものは所の儀に付き、晒しになるべく悪事いたし候はば新吉原大門口にて晒す
○遠島
 江戸より流罪の者は、大島、八丈島、三宅島、新島、神津島、御蔵島、利島、右七島の内へ遣わす、京大坂西国中国より流罪の分は薩摩、五島の島々、隠岐国、壱岐国、天草郡へ遣わす
 但し田畑家屋敷家財ともに欠所
○重追放
 但し欠所は右同断
○中追放
 但し田畑家屋敷は欠所、家財は構いなし
○軽追放
江戸十里四方
 但し欠所は右同断
右の重中軽ともに何方にても住所の国を書き加え相構う、住居の国を離れ他国において悪事を仕出かし候ものは、住居の国、悪事仕出かし候国ともに二ヶ国を書き加え、御構い場所の書付を相渡し候事
○江戸十里四方追放→日本橋より四方へ五里ずつ
○江戸払→品川・板橋・千住・本所・深川、四ツ谷大木戸より内御構い、但し町奉行所の支配場限り
○所払→在方は居村払、江戸町人は居町払
 但し欠所これなし、しかれども利欲に拘り候類は田畑家屋敷は欠所、尤も年貢未進等これ有り候はば家財とも欠所
○門前払→奉行所門前より払い遣わす
○奴→望みの者これ有り候は遣わす
 但し望み候ものこれなき内は牢内差し置く
○改易→(刀の)大小を渡し、宿へ相帰るそこより立ち退かせ申し候
 但し家屋敷取り上げ、家財構いなし
○閉門→門を閉じ窓を塞(ふさ)ぐ、釘〆には及ばず
 但し病気の節は夜中に医師を招き候儀、並びに火事の際は申すに及ばず、近所より出火の節は屋敷内で類焼を防ぎ候儀は苦しからず、総じて火事の節は屋敷が危うい体に候はば立ち退き、其の段頭支配へ申し達す
○逼塞→門を立て夜中に脇の潜りより目立たずように通路するは苦しからず
○遠慮→門を立て脇の潜りは引き寄せ置き、夜中に目立たずように通路するは苦しからず
○敲→数五十敲き、重きは百敲き、牢屋門前にて科人の肩背尻を掛かげ、背骨を除き絶え入り仕らずよう、検使役人遣わせ牢屋同心に敲かせ候事
 但し町人に候えば其の家主名主、在方は名主組頭を呼び寄せ、敲き候を見せ候て引き渡し遣わし、無宿者は牢屋門前にて払い遣わす
○入墨→牢屋敷に於いて腕に廻し幅三分宛て二筋、但し入墨の跡が癒え候て出牢
○戸〆→門戸を貫きをもって釘〆
○手鎖
 其のかかりにて手鎖をかけ封印を付け、五日目切りに封印を改め、百日手鎖の分は隔日に封印改め
○押込→他出は仕わせられず、戸を立て寄せ置く
○過料→三貫文、五貫文
 但し重きは十貫文、又は二十両、三十両、其の者の身上に従い、或いは村高に応じ員数を想定し三日の内に納めさせ候、尤もいたって軽き身上にて過料を差し出し難きものは手鎖

 条文の中に、「伺い有るべく」とか「伺い候べし」という言葉が頻繁にでてくる。
 老中に伺うという意味で、奉行が言い渡せる刑罰は中追放までで、重追放以上の刑罰は老中の許可が必要だった。
 また老中でも遠島(おんとう)や死刑は、将軍の許可を必要とした。
 近年問題になっている自白優位主義は、江戸時代には罪状や刑罰を確定する段階では、確実な証言や物証だけでなく自白を必要としたことに由来し、近代に入り、確実な証言や物証よりも自白を優先するようになったものである。
 確実な証言や物証が無けれ牢問や拷問は許可されず、責問(現代の取調べにあたる)の際には、他の職務を担当する役人の立会いが必要など、自白の任意性が求めれていた。