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SMとは(語源)

SMという言葉が使われるようになったのは、1920年代、ヨーロッパの精神医学において、性風俗における心理の研究に関してであった。
いわゆる嗜虐プレイの精神医学的考察の過程で、それをセクシャル・マゾヒスティック・プレイ、略してSMプレイと呼んだのが始まりとされる。

サディズムとマゾヒズムという言葉は、既に学術用語として使われていたが、精神医学的には両者は全く無関係の独立した精神性として認識される。
つまり、依存的攻撃性という犯罪心理としてのサディズムと、自虐性としてのマゾヒズムは、対になるものではないということである。

そもそも、サディズムは特に性犯罪者に顕著な特徴ではあるが、暴力的な犯罪に全般において見られる心理である。
また、マゾヒズムが性的な心理とされるのは、語源となったマゾッホの小説の影響である。
精神医学上のマゾヒズムは、あくまで自虐性である。
その作品については、マルキ・ド・サドの作品に影響を受けた結果として、第三者からみれば被虐性ととれる内容があることは確かだが、マゾッホ本人には、性的な自虐性はみられるが、いわゆる被虐性といえるような言動の記録は無い。

サディズムとは、虐待の加害者に見られる自己正当化の心理を指し、現在では主にドメスティック・バイオレンスにおける加害者の心理として扱われる。
この場合、一般にマゾヒズムと誤解されることが多い、虐待を受け入れてしまう被害者の心理は共依存であるから、サディズムと対になるのはマゾヒズムではなく共依存症なのである。

また社会学的なサディズムとは、サドの作品の発表以降、サド及びサド作品をカルト・フィギュアとする狂信を指す。
現在のいわゆるSMマニアとは、99.99%以上がこれに属するといわれ、この場合には、いわゆるSもMもサディストと定義される。
これは、精神医学的には解釈妄想症に分類される。
Sを加虐性、Mを被虐性とするのは、社会学的サディズムに属するSMマニアによるもので、SMをサド-マゾというのも同じである。

ちなみに、社会学的サディズムでは、某カルト教団の事件で話題となったマインド・コントロールの手法が用いられる。
SMプレイは、きわめて個人的な趣味と考えられがちだが、実はカルト的な集団に属しているのと同様の形態があり、自分からそこを離れることはほとんど皆無で、そこから離すためには、某カルト教団の脱退信者に行われたような、環境を整えた上での専門的かつ長期的なカウンセリングの手法が必要である。
ただし、日本でそれができる専門家を私は知らない。
SM系といわれる店でSMマニア相手にこういう話をしても、その時は納得して聞いているが、馬の耳に念仏、あっという間に元に戻ってしまう。
ちなみに、ドメスティック・バイオレンスの加害者や被害者にも同じようなことがいえる。
そのままにしておくと、70代、80代になってもそのままで、SMマニアの間で先生と呼ばれている人は珍しくない。


本題のSMプレイとは、マゾヒズムの同一視によって、相互に性的な従順な役割(ロール)を生じると考えられ、SMプレイとは支配と隷属、加虐と被虐という役割を相互に与えることで行われる性的なロールプレイ(イメージプレイと考えてもよい)をいう。
ただし、これは社会学的なサディズムがベースにあってのことで、それが無い場合はドメスティック・バイオレンスそのものとなる。
しかも、性風俗という環境に限定される。

社会学的なサディズムの発生以前、またはサドの時代(フランス革命期)以前のSMとは、純粋な奉仕と被奉仕の関係をいい、16世紀のフランスの娼館が発祥とされる性風俗としてのSMプレイも、その延長だったといわれている。

アクティング・アウト

アクティング・アウトとは、行動というかたちで現われる“衝動的行為”である

感情をことばではなく行動で表現してしまう
感情の起伏が激しく、特定の人を極端に理想化して好きになったり、些細なことばや行動の中に自分に対する否定的な態度を感じただけで衝動的に相手を攻撃してしまう
自分の理想どおりにいかないと絶望的になって自殺や自傷行為に向かったり、衝動的な浪費や万引き、不特定多数との性交渉など、自己否定的な行動をとったりする

アクティング・アウトの特徴を整理すると以下のようになる
・不安定性の強い人間関係
・慢性的な自己破壊行動
・慢性的な見捨てられ不安
・慢性的な不愉快
・認知歪曲
・衝動性
・欠しい社会適応

アクティング・アウトの傾向は、主に境界型(性)人格障害による場合が多いとされる
境界型人格障害は、不安定性人格障害という呼び方をされる場合もある
※人格障害という考え方自体がいまだ異論の多い概念である
人格障害は、いわゆる「病気」とは異なり、あるときに始まり、あるときに終わるといった、人生における異質性はないから、いわゆる精神疾患、精神障害なとの心の「病気」とは異なるといわれる
しかし、実際には人格と病気の関係は簡単ではないといわれる
・ある人格は、病気の発生を導きやすい
・ある人格は、病気の発生を阻害する
・人格の変化が病気の予兆となる
・病気のあとに人格が変化する
以上の例のように、人格と病気が密接に関連している場合もある
境界型人格障害では、境界の意味として主に四つの境界(例)があげられる
・人格障害の類型としての境界
・精神構造的機能水準の境界
・うつ病の境界
・分裂病の境界
つまり、病気の発生を導きやすい人格的な問題と考えられる

アクティング・アウトは、思春期の人間にみられる行動とその特徴が類似していることがわかると思うが、思春期のそれは一過性のもので、問題となるのはそれが思春期以降も継続することである
アクティング・アウトは、主に幼児期の見捨てれ感から生じる精神の「固着」であると考えられる
実際にその治療は、行動の結果に直面させ、その原因が見捨てられることへの不安であることを認識させることで、「固着」した精神を発展させる、「制限設定」という形でおこなわれる場合が多い

専門家によれば、境界型人格障害という診断例自体増加しているが、重大な結果を招くまで気づかない例が圧倒的に多いとされる
最近の様々な事件をみていると、殺人、傷害、虐待など、アクティング・アウトによるものが多い

ネオ・マゾヒズム

《リストカット》《ゴシック・ロリータ》《暗黒(黒色)バンド》をキーワードとする《ネオ・マゾヒズム》
自己敗北型のマゾヒスティック・パーソナリティ障害という位置づけが最も近いといわれる。

従来の依存性、自虐性、強迫性のトライアングルを形成する、俗に「おしん型」とも呼ばれる日本型のマゾヒスティック・パーソナリティとは異なることから、ネオ・マゾヒズムという言い方がされ、日本の若年層に独特(そこから日本文化に興味を持つ海外の若年層へと広がったとされる)の精神病理である。

その特徴は、自己の異端性や孤独性の強調にあるといわれ、それは「誰からも批判されない、責任を求められない」存在でありつづけようとする心理だといわれる。

この場合の《リストカット》は、自己の孤独性の象徴的な行為として存在し、リストカットや服薬などの行為について、隠そうとするのではなく、衆人にさらしながら、実に淡々と話すことができるという。
《ゴシック・ロリータ》の場合、黒という色と同時に、天使や十字架などのシンボル、そしてロリータという無垢なイメージによる、自己の神聖化という心理があるといわれる。
そして、ネオ・マゾヒズムの場合にはドクロなどの死をイメージするシンボルも好まれる。
《暗黒(黒色)バンド》とは、歌詞の中に、直接的な死や精神病理、(悪)魔などの一種異様な歌を主とするバンドの総称として使われている。
《ゴシック・ロリータ》や《暗黒(黒色)バンド》に共通するのは、俗に「暗さ志向」とも呼ばれ、異端性や孤独性の志向性によるものだと考えられている。
※近年流行するマンガやアニメ、ゲームなどには、これらと共通する要素が含まれるものが多いといわれる。

しかし、こうした形のネオ・マゾヒズムは、自己の異端性や孤独性を求めながら、趣味の共有ともいえる他者との関係性が生じる点において救いがあるともいえる。
上記のようなシンボリックなものが存在しない場合の方が危険だといわれ、それはいわゆるオタクと呼ばれる者の中に存在するとされる。
「誰からも批判されない、責任を求められない」存在でありつづけようとする心理は、しばしば親や家族への攻撃性というかたちであらわれる。
近年多発する親を殺す事件の多くが、この心理によって説明できるとされる。
そうした事件が起こるとしばしば問題にされる、現実と仮想(バーチャル)の境界喪失というのとは異なる。

変態とは?

[変質]
気質・性格に異常があること。変質者:気質・性格に異常がある者。
[変態]
変態性欲の略。性的倒錯に同じ。


精神医学において、サディスティック(依存的攻撃性)・パーソナリティやマゾヒスティック(自虐性)・パーソナリティは、人格障害には分類されない。

サディズムやマゾヒズムは、それぞれ、様々な人格障害や精神疾患に由来する病的な状態の総称(ただし俗称)である。
この場合、その行為が性的なものか否かは問題ではなく、[変質]であり、それが性的なものである場合に[変態]となる。

性的なサディズムや性的なマゾヒズム、いわゆる性的加虐性や性的被虐性という場合、それが[変態]であるかは、一人一人について詳細な検討が必要である。
この場合、本当の問題は、表面的な行動ではなく、そこに至る原因となった心理だからである。
一般的に性的なサディズムや性的なマゾヒズムという場合、性的欲求の指向性(性欲の対象や行為)は、外的要因(性的な情報)による半意識的なものであり、むしろ加虐や被虐という行為そのものに性的な快楽を得るという例は稀である。
その外的要因を社会学的サディズムといい、カルト的性格を有するものである点において注意が必要である。
一般的にSMプレイと呼ばれる行為は、社会学的サディズムを背景とする性的なイメージプレイもしくはロールプレイとしての演出に過ぎず、ICDやDSMにおける性的サディズムや性的マゾヒズムとは異なるのである。

変態(性欲)、性的倒錯とは、[変質]によって生じる場合と外的要因による場合があるが、いずれにしても、個人の中の性的欲求が、あくまで一方的に特定の対象や行為に向かうもので、特定の個人(パートナーなど)に対する愛情というものが全く存在しないものを指す。

※「性癖」とは、「性格や人格の偏り」であるから、「アブノーマルな性癖」という場合、「変質」のことである。
一般に「性癖」といわれている性行動は、「性嗜癖(せいしへき)」という方が正しい。
これらの間違った知識も社会学的サディズムによって作られたものである。

※「性的指向(性的嗜好は同音異義語の誤用が定着したもの)」は、マジョリティ(多数派)かマイノリティ(少数派)に区別するのが正しく、ノーマル(正常)かアブノーマル(異常)かは、その背景としての[変質]の有無によって区別される。

邦題『変態性慾ノ心理』について

リヒャルト・フォン・クラフト=エビング男爵
(Richard Freiherr von Krafft-Ebing,1840-1902)
オーストリア・ハンガリー帝国の首都で法精神医学の専門家として、多くの裁判で犯罪者の精神鑑定に携わった。

『性的精神病理( Psychopathia Sexualis )』 
1886年(第1版)~1903年(第12版)

この本は、エビングの臨床経験を基に書かれた専門家向けの症例集(240件)を中核としている。
故に、高度に学術的なスタイルで著し、一般読者を遠ざけるため、本の名称も科学的な術語を慎重に選択している。
また本の章題を、同じ目的でラテン語で記し、本文でも、卑俗な言葉や、露骨と考えられる表現・描写や学術用語は、そこだけラテン語になっている。
教養のない読者を遠ざけるための一種の伏せ字である。
しかし、多くの読者が、これを性的興味の対象としたところに、現代に至るSMに関する誤解や偏見の原因があったといえる。

この本は、初版は110頁だが、12版では434頁で、大きく6章に分かれるが、具体的な病理としては、快楽殺人から象徴的行為に至るサディズム、サディズムの反義語としてのマゾヒズム(後の精神医学において、マゾヒズムはサディズムの反義語ではない)、フェティシズム、同性愛の四種類に分類される。
フェティシズムは第4版から、サディズムとマゾヒズムが本格的に扱われるのは第6版からである。

『色情狂編』 
日本法医学会/春陽堂 明治27(1894)年 明治政府により発禁処分
『変態性慾ノ心理』 
河出書房 大正2(1913)年

日本では、以上の邦題で翻訳出版されたことで、単なる性的興味の対象として扱われ、伊藤晴雨や江戸川乱歩などの作品に代表される変態ブームが起こり、それが精神疾患(特にサディズム=犯罪心理)であるという認識を希薄にし、むしろ、現在に至ってもなお、犯罪行為を正当化するものとして悪用され続けているのである。

監禁王子と呼ばれた男が法廷でサディズムについて論じたが、「自己の暴力(犯罪行為)の責任や原因を被害者や他のものに転嫁する犯罪者の心理」という意味で、この男は本当の意味でのサディストであるといえる。
ちなみに、この事件が話題になった頃、サディストを自称するSMマニアとして、この男の行為を擁護する者と否定する者とがいたが、サディズムを犯罪心理として否定する者はほとんどいなかったという点が問題だと感じている。
誰もが平気で「ドS」だとか「ドM」だとか言って、暴力を笑って見ている現状が恐ろしくてならない。

変態性欲ノ心理

2002年発行のこの本は、サディズム、マゾヒズム、フェティシズムに関する111例の症例を掲載。

フェティシズム

フェティシズム(Fetishism)は、人類学・宗教学では呪物崇拝、経済学では物神崇拝と訳される。
また、心理学では、物品や生き物、人体の一部などに性的に引き寄せられ、性的魅惑を感じるものを性的フェティシズムといい、誰もが持つ性的指向であるが、極端な場合に、性的倒錯や変態性欲の範疇に入る。

日本では、上記のうち心理学的な意味における「性的フェティシズム」を指す事が多く、精神医学ではかなり深いこだわりを指すものであるが単なる性的指向程度にも使われ、省略形であり俗語のフェチという言葉で呼ばれる事が多い。
しかし、古来日本の神道では、あらゆるものに神が宿るとされ、これは呪物崇拝的フェティシズムということができるから、これが性的フェティシズムに転じたケースは珍しくない。
フェティシズムを向ける対象をフェティッシュ(fetish)、フェティシズムの志向を持つ人をフェティシスト(fetishist)という。

フェティシズムという言葉を使い始めたのはフランスの思想家ド・ブロスだといわれ、1760年に『フェティッシュ諸神の崇拝』による。
ここで扱われているのはアフリカの住民の間で宗教的な崇拝の対象になっていた護符(フェティソ Fetico)で、これを呪物崇拝と呼ぶ。

カール・マルクスは、資本主義経済批判の展開において、経済を円滑にする手段として生まれた貨幣自体が神の如く扱われ、人関係を倒錯させていると述べた。
また『資本論』第1巻(1867)の「商品の物神的性格とその秘密」という章で、「商品」の持つフェティシズム(物神崇拝)を論じ、マルクスのフェティシズム論(物神崇拝論)は20世紀になって注目されるようになった。

心理学者のアルフレッド・ビネーは、1887年、肌着、靴など(本来、性的な対象でないもの)に性的魅力を感じる事をフェティシズムと呼ぶよう提唱した。
次いでクラフト=エビングが『性的精神病理』第4版(1889年)の中でフェティシズム概念を採用し、フロイトも性の逸脱現象としてこの用語を用い、足や髪、衣服などを性の対象とするフェティシズムは幼児期の体験に基づくものと考えた。

精神医学でいうフェティシズムは変態性欲、性的倒錯とされており現代日本で用いられる軽い趣味ではなく、性的対象の歪曲を指す。
診断は訓練をつんだ専門家によって行なわなければならないが、アメリカ精神医学会の精神障害の診断と統計の手引きにはフェティシズムの診断ガイドラインが設けられている。

・長期(少なくとも6ヶ月以上)にわたる、生命の無い対象物に対する強烈な性衝動、妄想、行動が持続、反復する。
・その性衝動、妄想、行動により著しい苦痛、または社会的、職業的な障害を引き起こしている。
・対象物は衣服や性具に限らない。

フェティシストには大きく分けて鑑賞派と実践派の二種類が存在しており、それぞれが独立した別の性趣向として存在している。

日本では、男性のフェティシズムは市民権を得ているが、女性のそれは認知されていなかった。
フェティシズムは、変態性欲の一つとみなされる事が多く、精神医学において性的倒錯や変態性欲傾向が認められる患者は圧倒的に男性が多いとされているからである。
しかし、女性の化粧やファッションなどもフェティシズムの一種と考えることができるし、最近では、コスプレなどの流行により、女性のフェティシズムも認知されるようになっている。
また、フェティシストの大部分は鑑賞派とされ、一般にフェティシズムという場合、鑑賞派を指す場合が多く、実践派は稀とされてきた。
すなわち、男性のフェティシズムには鑑賞派が多く、女性のフェティシズムが実践派が多いということがいえる。

性的倒錯について

●性目標における倒錯(とうさく)
性交を最終目標としないで、別の行為を通じて性的満足を得る場合。
性行為における「性目標倒錯」とされる。
ただし「性対象倒錯」と組み合わさっている場合がある。

性的サディズム: 相手に性的虐待を加えることに快感を求める欲求。
性的マゾヒズム: 相手から性的虐待を受けることに快感を求める欲求。
性的サドマゾヒズム: 一人でサディズムとマゾヒズムがある場合。
ボンデージ: 身体を縄などで縛り/縛られ、拘束する/されることを求める欲求。
スパンキング: 平手などで相手を叩き、苦痛を求める欲求。
鞭打ち(ウィッピング): 相手を鞭で打ったり、相手から鞭打たれたりすることを求める欲求。
ポニープレイ: 人間を馬に見立てて、轡を噛ませたり、騎乗して鞭打つなどを求める欲求。
手淫: 手だけを使って行う性的行為を求める欲求。自慰とは異なる。
シトフィリア: バナナ・人参・胡瓜などを使う性的行為を求める欲求。
接触: 他者の身体に自分の性器などを擦りつけることをを求める欲求。
窃視(スコプトフィリア): 他者の性的行為などを覗き見することを求める欲求。
露出(エギジビショニズム): 自分の裸体・性器等を他者や公衆の前に示して性的興奮等を得ることを求める欲求。
動物虐待: 動物を虐待したり、傷つけたりすることで性的満足を得ることを求める欲求。
窃盗(クレプトラグニア): 窃盗行為によって生じる性的満足を求める欲求。
放火(ピロラグニア): 放火行為によって生じる性的満足を求める欲求。
浣腸(クリスマフィリア): 自己や他者の浣腸や、その行為を見ることを求める欲求。
アノレクタル: 肛門や直腸に異物を挿入する事で性的興奮を得ることを求める欲求。
嘔吐: 自分や他者が嘔吐することで性的興奮を得ることを求める欲求。
ハイボクシフィリア: 低酸素症を引き起こす事で性的興奮を得ることを求める欲求。
尿(ウロラグニア、ウロフィリア): 人の排尿を見ることや、尿を飲むことを求める欲求。
糞便(スカトロジー、コプロラグニア): 人の糞便を弄んだり食べることを求める欲求。
血液(ヘマトフィリア): 主に視覚・嗅覚・味覚的要素において、血液で性的興奮を求める欲求。
カニバリズム : 人肉を食べることを求める欲求。
死(タナトフィリア): 自殺行為や、擬似自殺行為によって生じる性的満足(マゾヒズムやネクロフィリアとは異なる)を求める欲求。あくまで「死」に対する欲求である。

●性対象における倒錯
性交を性行為の最終目標とするが、性行為の相手・対象に倒錯がある場合。
性行為における「性対象倒錯」とされる。

○フェチズム(性的フェティシズム): 特定の事物や人物の特徴への性的な固執の総称。
※本来の宗教的な対物崇拝を意味するフェティシズムと区別する為、「性的対象倒錯」についてはフェチズムとする場合が多い。
脚フェチ: 女性の脚などに性的興奮を覚える。
巨乳フェチ: 女性の膨らんだ胸部や大きな乳房に性的興奮を覚える。 
眼鏡フェチ:眼鏡をかけた異性に性的興奮を覚える。
貧乳フェチ: 女性の乳房で小さなものに性的興奮を覚える。
無毛フェチ: 陰部の剃毛に性的興奮を覚える。
体臭フェチ(オスフレジオラグニア):体臭に性的興奮を覚える。 
毛皮フェチ: 毛皮を着た女性や、毛皮自体に性的興奮を覚える。
風船フェチ: 膨らんだ風船や、それが破裂することに性的興奮を覚える。
ラバーフェチ: 身体に密着するラバーの感触などに性的興奮を覚える。
レザーフェチ: レザー(皮)の感触や滑らかさに性的興奮を覚える。
靴フェチ: ハイヒールなどの靴に性的興奮を覚える。
コプロフィリア: 糞便に性的興奮を覚える。
ミソフィリア(汚損愛好症): 汚れた下着や、使用済みの生理用品に性的興奮を覚える。
服飾フェチ(異性装など): 服飾に性的興奮を覚える(男装・女装など)。
衣装交換フェチ(トランスヴェスティズム): 相手との衣装交換行為に性的興奮を覚える。
インファテリズム(幼児プレイ): 自らが、赤ん坊の格好をする事に性的興奮を覚える。
アドレッセンティズム: 少年、少女の格好をする事に性的興奮を覚える。
自動車フェチ: 自動車そのもの(ボディの曲線など)に性的興奮を覚える。
フォーミコフィリア: 昆虫などが、這いずる様子に性的興奮を覚える。
偶像(ピグマリオニズム): 偶像、人形に性的興奮を覚える。
筋肉フェチ: 相手の発達した筋肉、筋力に性的興奮を覚える。
授乳フェチ(ミルクフェチ): 女性が授乳する姿(母乳)に性的興奮を覚える。
ペデラスティ: 年長男性が青少年に性的興奮を覚える。
エフェボフィリア: 思春期から青年期の男女に性的興奮を覚える。
幼児・小児(ペドフィリア): 思春期前の児童に性的興奮を覚える。
老人(ジェロントフィリア、ジェラントフィリア): 老人に性的興奮を覚える。
妊婦: 妊娠している女性に性的興奮を覚える。
オートガイネフィリア: 男性が自身を女性だと思うことに性的興奮を覚える。
アンドロミメトフィリア: 女性に性転換した男性に性的興奮を覚える女性。
ジィネミメトフィリア: 男性に性転換した女性に性的興奮を覚える男性。
フリークス: 身体に欠陥があったり、奇形のある人に性的興奮を覚える。
アクロトモフィリア: 手足の欠損した人に性的興奮を覚える。
アポテムノフィリア: 自分、もしくは他人の手足が欠損する事に性的興奮を覚える。
アベイショフィリア: 身体障害者に性的興奮を覚える。
矮人: 小さな身体の人に性的興奮を覚える。
動物(ズーフィリア): 動物に性的興奮を覚える。
獣姦(ズーセクシャリズム):動物との性交渉に性的興奮を覚える。 
死体(ネクロフィリア): 死体などに性的興奮を覚える。


「性目標倒錯」や「性対象倒錯」では、「愛」や「愛情表現」という言葉を使うことで正当化することが多い。
しかし、これらはあくまで個人の中にある「性的欲求」であって、「愛」や「愛情」とは異なる。
「性的倒錯」とは、偏った性的欲求よって、正常な人間関係としての恋愛関係を構築できない状態をいう。
また、「性的倒錯」は、上記のような特殊な「性目標倒錯」や「性対象倒錯」ばかりではない。
例えば、「浮気」や「不倫」を繰り返す場合、「異性」全般または好みの異性を対象とする「性対象倒錯」の一種である。

※古典的心理学や古典的精神医学では、「性的倒錯」について「○○性愛」という表記をする。
※「性的倒錯」を「性癖」という人がいるが、性的な「嗜癖(しへき)」というのが正しい。
性癖:人格や性格の偏り
嗜癖:あるもの(こと)を特に好きこのむこと(癖)。
※日本語としての「嗜好」は、基本的欲求(欠乏欲求)によらない趣味趣向に使われる言葉であるから、「性的嗜好」という表記は日本語としては正しくない。
英語を翻訳した初期の精神医学書において、セクシャル・オリエンテーションの訳「性的指向」が誤植され、それが訂正されずにそのまま定着してしまった言葉だといわれる。

マゾヒスティック・パーソナリティ

マゾヒスティック・パーソナリティは、「自虐性人格」と訳される。

サディスティック・パーソナリティが親との関係により形成されるのに対して、マゾヒスティック・パーソナリティは、より大きな集団の中での社会性の発達の過程で形成される。
つまり、その社会における道徳観や倫理観の影響を受け、その社会の中での自分の立場、位置というものを意識することによって形成されるのである。

それは、マゾヒスティック・パーソナリティが、人間が社会生活を営む以上、誰の中にも存在する心理であることを意味している。

一般に、マゾヒスティック・パーソナリティは、個人の中にあるサディスティック・パーソナリティの攻撃性が自己に向かったものだと考えられる。
サディスティック・パーソナリティにおいて、他者に転嫁される責任や原因を、その責任や原因が自分自身にあると認識するのである。

注意しなければならないのは、マゾヒスティック・パーソナリティは、あくまで自虐性だということである。
マゾヒスティック・パーソナリティにおいて被虐性という場合、自己の行動を、所属する社会における道徳観や倫理観に照らすことによって生じる罪の意識を、罰を受けたり責められることで解消しようとするもので、現実的に他者から攻撃されることを欲するのではない。

●マゾヒスティック・パーソナリティの分類

ぶちこわしタイプ

 自己評価が低く、その評価を超えた状態(幸福や成功など)になった時、その状態が壊れることへの不安や恐怖から、自らその状態を壊してしまう。

尽くしまくりタイプ

 自分を犠牲にして尽くすことで自分の必要性を強く意識させる。
 独占欲が強い場合が多い。

ネガティブタイプ

 自分の置かれている状態、立場についてネガティブな考え方しかしない。 
 自分の不幸を殊更に強調する。

自己陶酔タイプ

 一見すると尽くしまくりタイプに見えるが、尽くしている自分に陶酔しているタイプ。
 それによって注目されることを目的としている。

<推薦図書>
マゾヒスティックな人格

「マゾヒスティックな人格」
矢幡 洋:著
春秋社
2005年4月20日(第一刷)
2,100円+税

サディスティック・パーソナリティ

サディスティック・パーソナリティは、一般に「依存的攻撃性人格」と訳される。
自己の攻撃性(暴力)の原因や責任を他に転嫁することで自己正当化する、心理的な自己防衛機能の一種と位置づけることかでき、基本的には誰の中にも存在する心理である。
※いわゆるサディズムとは区別される。

 原則的に、人格形成や性格形成は、生物学的要素と成育史的要素の相互作用によるが、サディスティック・パーソナリティの形成には、成育史的要素が大きく占めているとされ、他の誰でもなく、生後の親との関係によって形成されるといわれている。

●サディスティック・パーソナリティのタイプ

キレるタイプ
 俗に癇癪(かんしゃく)持ちといわれる。
 なんらかのきっかけで感情が爆発し、自己コントロールできなくなる。 

暴君タイプ
 常に意図的な攻撃性を発揮する。
 相手に効果的にダメージを与えることで、自分への攻撃をさせない。

警察タイプ
 正義の名のもとに攻撃性を発揮する。
 秩序を維持するように見せて、常に攻撃する機会を窺っている。
 最近話題になる「クレーマー」はこのタイプに分類される。

臆病タイプ
 内心の恐怖心により、周囲に対して攻撃性を発揮する。
 攻撃こそ最大の防御と考え、強そうに見せかける。

抑制タイプ
 自己の攻撃性を常に抑制する。
 攻撃性を発揮する際には、長期的な戦略をもって心理的に攻撃することが多い。
 二重人格的に、身近な者に対してのみ攻撃的になる場合もある。

自虐タイプ
 自己のダメージを強調することによって、相手を攻撃する。
 ダメージをドラマチックに誇張することで相手を非難し、罪悪感を抱かせる。

※上記だけみると、サディスティック・パーソナリティに異常性を感じるかもしれないが、同じく誰の中にも存在するマゾヒスティック・パーソナリティとの均衡によって基本的人格を構成すると考えるべきで、サディスティック・パーソナリティのみで判断することはできない。

<推薦図書>
サディスティックな人格

「サディスティックな人格」
矢幡 洋:著 春秋社 2004年11月25日(第一刷)
2,100円+税

依存症とは

●依存症の分類

「物質」への依存
  アルコール依存症
  薬物依存症
  摂食障害
  たばこ(ニコチン)依存症

「行為」への依存
  ギャンブル依存症
  買い物依存症
  手首自傷(リストカット)症候群
  ワーカホリック(仕事中毒)
  テクノ依存症(携帯中毒など)

「人間関係」への依存
  家族依存症(社会的ひきこもりなど)
  ドメスティック・バイオレンス(DV)
  児童虐待
  セックス(恋愛)依存症

●依存症の特徴

 病識の欠如
   心の病であるという「病識」がないから、「病気かもしれない」とは思わない
   社会全体としても心の病に関する認識が乏しい
 否認
   病識の欠如から自覚が無いため、「自分は病気じゃない」と否認する
 反省や内省の欠如
   自分の非を認めず、責任や原因をほかに転嫁する
   反省や内省をしないから、同じ過ちを繰り返す
 抑制の欠如
   行為や対象に対した時、抑制が効かない
 依存的性格
   人格的に未熟な場合が多く、責任がとれない

●依存症における行動の特徴

 強迫性
   やめようと思ってもやめられない
   やらずにはいられない
 反復性
   やめられないから繰り返す
   一度やめても、また同じ行為や対象に依存してしまう
 衝動的
   思いついたらすぐに行動に移してしまう
   他のことに目がいかなくなる
 貪欲性
   依存する行為や対象に執着する
   カギとカギ穴に例えられる